センサーの開発といっても、「センサー機器・モジュールの開発」と、「センサー素子自体の開発」では、対応技術分野がかなり変わります。「センサー素子自体の開発」は、電子材料や電子部品の製造技術などが必要になり、安定的な供給面まで配慮しようとすると、それなりの事業規模の会社が対応する分野になります。
 日本では非常に世界的に有名なセンサーメーカー・電子部品メーカーが多く存在しています。一方、「センサー機器・モジュールの開発」というのは、センサー素子を組み合わせ、センサー素子からのアナログ信号を回路基板で処理し、信号を演算処理する為にマイコンの中のプログラム(ファームウェア)を開発する能力が必要になります。
 「センサー素子の開発」が出来る会社・エンジニアでも、センサー機器・センサーモジュールの開発が出来るとは限りません。外部CTOでは、アナログ回路設計・ファームウェア開発の熟練エンジニアによる「センサー機器・センサーモジュールの開発」を得意としています。

事業開発者が知っておきたいセンサーの基礎1では、主に、現場の状況を把握するセンサー素子について触れました。今回は、そのセンサー素子からの電気信号(=センサーデータ)がセンサー機器内で、どのようなプロセスをたどって、外部機器へ送信されるかを見ていきます。

センサー素子で検出された電気信号(IoTデータ)が、どのようなプロセスで所望の出力信号になるかを解説

信号前処理回路

センサー素子から出力される電気信号は、通常は、非常に小さい電圧の為、そのままではマイコン側で読み取れず、後々の信号処理が出来ません。従って、まずは、信号増幅回路(オペアンプ)で、受け取ったセンサー信号の感度を増幅したり、ゼロ点(基準点)補正をします。オペアンプは、通常アナログICを用います。

アナログーデジタル変換回路(AD変換)

オペアンプから出力される電気信号は、アナログ電気信号で、そのままでは、マイコン(コンピューター)は読み取れません。コンピューターが読み取れるのは、0か1のデジタル信号なので、このAD変換回路(ADコンバーター・ADコンなどと呼ばれてます)でデジタル量に変換します。センサー機器やセンサーの精度を表すときに、分解能・サンプリング周波数・AD変換時間などが言われますが、基本的には、このAD変換回路の性能を言いますので、センサー機器にとって非常に重要な回路になります。 AD変換回路は単独のICとして用いられていましたが、最近のIoTセンサー機器の需要から、AD変換機能が内蔵されているマイコンも非常に多くなっています。AD変換機能だけのICを用いると部品点数が増え、センサー機器自体の価格が上がる為、特殊な用途以外では、AD変換機能付きマイコンを利用するケースがほとんどです。

マイコン内でのセンサ信号処理

AD変換回路からのデジタル信号を処理するのが、マイコン(マイクロコンピューター)です。デジタル信号を、情報とする為に、様々な演算処理・ノイズに対するフィルタリングなどがこのマイコンの中でなされます。このプログラムは、一度マイコンに書き込むと、開発者じゃないと、後から書き換える事が困難なソフトウェアなので、ファームウェア(固定されたソフトウェア)と呼ばれています。このファームウェア開発は、センサーの特性やアナログ回路の事もしっかり分かっている必要が有り、熟練のノウハウが役に立つ部分です。

出力回路

マイコンで処理された情報を、センサー機器・センサーモジュールの外部に出力する為の役割をする回路です。マイコンで処理されたデジタル情報を、接続先に応じてアナログ・シリアル・パルス幅変調出力に変換する機能を持ちます。

アナログ伝送出力:0~5Vの電圧での出力。4~20mAの電流での出力をします。

シリアル伝送出力:RS232C・RS422・RS485などの各種規格に変換して出力

パルス幅変調(PWM)出力:デジタル信号を一定周期内で繰り返すパルス幅に比例させる信号。デジタル信号をアナログ信号のように出力する事が可能で、LEDやモーターを駆動させる場合に使われることが多いです。

無線通信:IoTデバイスでは、Wi-Fi Bluetoothなど各種通信規格に対応した通信回路を経て外部に送信されます。

上記に加え、IoTでは、I2C・SPIというシリアル通信で出力するケースも多いです。センサーデバイス・スマートデバイスを開発する現場では、センサー機器・センサーモジュールからの出力形式についての話で、上記の言葉が頻繁に出てきますので、エンジニアではない事業企画担当者でも、この辺りの概要を理解しておくのが、コミュニケーションをスムースにさせるのに、役立つでしょう。