前回までで、ジョブ理論の位置づけを見てきました。とても、魅力的な理論じゃないか!と思われた方も多いかと思います。しかし、実際に現場で活用しようとなると、それが案外難しい事に気づきます。
今回からは具体的に、顧客のジョブをどのように捉えるのか考えて行きたいと思います。
実は、顧客ジョブを定義する事自体は、それほど難しくはありません。後日お伝えしますが、定義したジョブが本当に切実なジョブなのか?つまり、顧客が身銭を切ってでも解決したい課題なのか?を見極めることの方が難しいです。つまりジョブも、切実なものから、そうでないものまで、様々にあるのです。さらに、切実なジョブを見つけたとしても、それを解決するためのソリューションを開発し、顧客に届けなければなりません。その際に、「ジョブを解決する際の顧客のこだわり」に見事に応えられなければ、そのソリューションは「顧客に雇ってもらえません」。
ジョブ定義文
いずれにせよ、まずは、ジョブの定義文を考えてみましょう。
ジョブではない事
「人生の指針・大テーマ・目標はジョブではない」
同種のソリューションでないと解決できない事は、ジョブではなく、ソリューションへのニーズである
例えば、「忙しいけど、お腹がすいたので、手っ取り早く食事したい」はジョブですが、「ハンバーガーが食べたい」はジョブではなく、ハンバーガーに対してのニーズをいっています。クリステンセン教授は、「ジョブ理論」の中で、このように言っています。
「 350 ミリリットル の 使い捨て 容器 に はいっ た チョコレート味のミルク シェイクがほしい」は ジョブ では ない。これ を 片づけるために雇用 する有力候補は、すべて ミルク シェイクという製品 カテゴリのなかにあり、ニーズ または嗜好とは言えても、ジョブではない。
1ジョブ=1ソリューションではない
1つのジョブには様々なソリューションが存在する
例えば、休日に気分転換したいというジョブを解決するソリューションは、「家族と過ごす」「海水浴に行く」「ハイキングに行く」「ドライブする」「友人と食事に行く」など、様々あります。従って、例えば、レストランのオーナーからすると、休日に気分転換したいという顧客を取り込もうとしたとき、ライバルは、同業のレストランはもちろん、(極端な話ですが)海であり、山であり、車であるとも言えます。つまり、ジョブ理論の視点でいくと、これまでライバルと思っていなかった企業がライバルに浮かび上がってくるので、競争の景色が一変します。
一つのソリューションで解決できるジョブは沢山ある
・煙草を吸う人との喫煙所でのコミュニケーションは継続したい・子供の受動喫煙を心配する妻からのプレッシャーと自分の欲求の間に折り合いをつけたい
様々にあると思います。ジョブ理論の視点を身に着けると、自社の既存製品・既存のリソースが解決できる新たなジョブが見つかります。つまり、シーズから新規事業企画のタネが得られます。
例えば、ビールというソリューションが解決しているジョブは、「気分転換」「同僚とのコミュニケーションの補助」「商談接待の場のうるおい」「食事を楽しむ」「のどを潤す」「何もかも忘れる」など様々です。
であれば、ビールメーカーは、味や品質などだけを訴求するのではなく、同僚とのコミュニケーションを促進するようなサービスを付加する等の企画タネが出てくるでしょう。
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